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映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』母がダイナマイト心中…末井昭さんの破天荒人生

昭和50年代、「写真時代」や「ウイークエンド・スーパー」などベストセラー雑誌を次々と企画した名物編集長、末井昭さんが、自らの壮絶な生い立ちなどを綴(つづ)ったノンフィクション「素敵(すてき)なダイナマイトスキャンダル」が映画化され、公開中だ。

センセーショナルなタイトルは、末井さんが幼いころ、母が隣家の若い男性と家出し、ダイナマイト心中した実話に由来する。

「映画の内容は事実かどうか? 100パーセント本当であり、100パーセントフィクション。深層心理はきちんと描かれていますね」と末井さんはにやりと笑った。

小説のような人生

生まれ育った岡山から大阪での工場勤めを経て上京。看板描きやイラストレーターなどを経験後、出版社へ入り、売れっ子編集者となった末井(柄本佑)。

飄々と生きているが、実は壮絶な過去を背負っていた。幼いころ、母(尾野真千子)が隣家の若い男と家出し、ダイナマイトを使って心中していたのだ…。

まるで小説のような物語だが実話だ。

職を転々とし、編集者となった末井さんは、昭和52(1977)年に雑誌「ウイークエンドスーパー」を、56年には人気写真家の森山大道やアラーキーの愛称で親しまれる荒木経惟らの写真を掲載した雑誌「写真時代」を創刊。

原稿の執筆陣には糸井重里や南伸坊らを揃(そろ)え、同誌はベストセラーとなるが、荒木たちの過激な写真が度々物議を醸し、末井さんは警視庁に何度も呼び出され、注意を受けることに…。

警察との攻防、赤裸々に

映画では当時、社会をにぎわした“数々の事件”も赤裸々に描かれる。

末井が編集した雑誌に掲載されたわいせつな写真をめぐり、末井役の柄本と、松重豊演じる警察官とが繰り広げる警察署内での互いの意地をかけた激しいやりとりは圧巻だ。2人が真剣に熱演しているだけに、滑稽でもあり、見ていて思わず笑みがこぼれる。

「“警察官との攻防”はだいたい映画の通りでしたね」と末井さんは苦笑した。

57年、自伝のノンフィクション「素敵なダイナマイトスキャンダル」を刊行。母親の心中事件を打ち明けた衝撃的な内容は世間をにぎわし、映画の中では、「母親のスキャンダルを売り物にしてどうする!」と編集者たちから非難されるシーンも描かれる。

ところが、柄本演じる末井は、こんな周囲の偏見に満ちた悪意の声にもひるまない。「母親のスキャンダルを売り物にしてなぜ悪い!」と吐き捨てる場面は、自分を鼓舞するようで、切なくもあり、とても印象的だ。

消費税導入へ独自の怒り

政府の消費税3パーセントの施行に怒った末井が当時、実際にしていた“衝撃的な行動”も描かれる。

柄本演じる末井が「ええい、めんどくさい、こんなもの邪魔だ!」と言い捨て、ポケットに入っている小銭を道端にばらまきながら繁華街を歩くのだ。

「これも本当にやっていたことですよ。中途半端な消費税のために、どんどん財布にたまっていく小銭が邪魔で、ばらまきながら歩いていたんです」と豪快に笑った。

メガホンを執ったのは、文豪、太宰治の小説「パンドラの匣(はこ)」を映画化した冨永昌敬(まさのり)監督。

「太宰の世界観と似ていると思ったんです。どちらも主人公が新しい男へと変身する物語。言い換えれば、変身しないと生きていけない男の物語なんです」と映画化した理由を語った。

言い訳しない生き方

幼いころからずっと母が病弱で家計は苦しく、7歳のときに母が心中。末井さんの生い立ちは壮絶だった。だが、そんな過酷な現実にひがむことも、他人からの冷たい視線に屈することもなく、堂々と人生を切り開いていく。

不幸な境遇を言い訳にしながら、愚痴ばかり言って生きているようなひ弱な現代人とは明らかに違う。

「今の若者たちですか? 生きるモチベーションが低いのでしょうか。本当に食べるものがない、という経験もしたことがないでしょうし…。

今は社会へ出なくても食べていけるし、生きてもいける。いろいろな人と関わり、接することで、生きるモチベーションは高まるのだと思いますよ」

今年70歳を迎えるが末井さんの創作意欲は衰えない。今月、新刊のノンフィクション「生きる」を刊行。音楽好きで、サクソフォン奏者としてセッションを行う音楽公演も現在準備中という。

強く生きるメッセージ

柄本を取材した際、彼は「撮影前の休日、末井さんの故郷・岡山へ行って末井さんのお母さんのお墓参りをしてきたんです。墓前に台本をお供えしてきました」と教えてくれた。

「それは末井さんが最近、お母さんのために建てたお墓なんですよ。お母さんの遺品はダイナマイト心中によって着物の切れ端などしか残らなかった…。

だから、きちんとしたお墓を末井さんはお母さんのために建てたかったんでしょうね」と冨永監督が教えてくれた。

なぜ、あなたはそんなに強く生きられるのか?

質問に末井さんは「自分は“生かされてきた”のだと思いますよ…」と淡々と答えた。

学校でのいじめ、職場でのリストラ。そんなストレスによって増え続ける鬱病発症や自殺…。経済が豊かになる一方、日本人の精神は貧しく、陰湿化し、ひ弱くなってはいないか?

こんな叱咤(しった)激励のメッセージが、この映画には込められている。

[via:http://www.sankei.com/west/news/180323/wst1803230003-n1.html]

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コメント

  1. 1
    名無しさん 2018/03/29 8:13

    破天荒な奴は周りの支えがあってこそ。
    せめて尻拭いされながらの人生ってことを自覚してください。

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