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【ボクシング】井上尚弥「足が死にそう」史上最速Vの舞台裏・・・長期政権を築くには

手負いのチャンピオンが力強く突き上げる左右のパンチを振ったとき、4300人の観衆がざわめいた。しかし、若き挑戦者はシャープなワンツーで押し返し、左アッパーから右ストレートを振り抜いた。

新王者-井上尚弥
新王者-井上尚弥

王者が前のめりにマットに沈み、大田区総合体育館に絶叫と歓声がこだました。カウントを数えるレフェリーは、戦意を失い自身の目をまともに見ようとしない王者の前で両手を挙げて交錯させた。新王者誕生の瞬間だった。

エルナンデスを攻める井上尚弥
エルナンデスを攻める井上尚弥

日本最短プロ6戦目の世界王座奪取を成し遂げた井上尚弥は、達成感のあまりリングに突っ伏し、立ち上がると青コーナーから駆け上がって来た父の真悟トレーナー、大橋ジム・大橋秀行会長とがっしりと抱き合って喜びを分かち合った。父に肩車をされて眩いばかりのライトを浴びる井上の姿は、試合前以上の可能性に満ち溢れて輝いていた。

高校生で史上初の7冠に輝き、プロ転向後も高い実力を示してきただけに、キャリアが少ないとは言っても、井上の勝利を予想する声は多かった。

井上は試合後に「1、2Rは、自分のペースで行ったけど、世界王者がこのまま終わるわけがない。絶対に何かを持っているので。相手はその通りに4回から出てきた。

そこで足を使えれば良かったけど、ちょっとつってしまった。減量(の影響が原因)ですね」と要因を明かした。左もも裏に違和感を覚え、セコンドには「足が死にそうです」と伝えたという。エルナンデスのパンチが井上を捉える度に、期待を裏切る早期KO勝利の予感から、王者が底力を見せる予感へと観客が察知する雰囲気が揺れ動くようだった。[sportsnavi]
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/fight/all/2014/columndtl/201404070009-spnavi

■井上尚弥が背負っているリスク

あまりのワンサイドゲームだったために、「弱いチャンピオンを連れてきたのではないか?」という疑問の声があるかもしれないが、それは完全否定しておかねばならない。

アドリアン・エルナンデスエルナンデスはプロキャリア8年、32戦29勝(18KO)2敗1分の戦績を残している軽量級きっての強打者である。接近してからの攻撃力には定評があり、数々のトップ選手をその拳で粉砕し、アメリカ大陸王座、北米王座などを獲得後、26歳で世界の頂点に駆け上がった。

世界戦の数だけでも、井上の全試合数を上回る8戦(7勝5KO1敗)を経験している。今回の試合まで4度の防衛を重ねているように、その実力はチャンピオンとして十分なものである。

井上はそんな相手に立ち向かったわけだが、海外のオンライン・カジノの戦前オッズ(賭け率)は、なんと6対1で「井上有利」と出ていた。すでに井上の評価は、海外でも極めて高かったのである。

アドリアン・エルナンデス井上尚弥実際の試合でも、井上のスキルはエルナンデスをはるかに凌駕していた。最後に相手を仕留めた右ストレートの破壊力も、文句なしといえる。今回の勝利は偶発的な一発によるKOではなく、テクニックでもパワーでも、チャンピオンを明らかに上回る技量を見せつけた末のノックアウトという点で、高い評価を与えることができるだろう。

今回の試合を通して考えさせられたのは、選手の「経験」というテーマである。将来が期待されるボクサーの場合、力量が劣ると思われる相手を慎重に選択しながらマッチメークしていくケースが多い。

その一方で、井上のようなハードなマッチメークで急激に力をつけさせる育成法もある。本来ならば3~5試合かけてテストすべき課題を、1試合でクリアしなければならないのだから、必然的に相手のレベルは相応に高くなる。

井上尚弥デビュー戦井上の場合は、デビュー戦から東洋太平洋ランクに名を連ねるフィリピンの国内チャンピオンを対戦相手に指名した。2戦目はタイの国内チャンピオン、3戦目は日本ライトフライ級1位、4戦目は日本チャンピオン、5戦目は東洋太平洋王座決定戦、そして6戦目が世界戦と、まったく遊びがないマッチメークといえよう。その内容と結果を考えれば、すでに井上はプロで18戦~30戦に相当する経験を積んでいると言ってもいいかもしれない。

ただし、この強気の育成法がリスキーなのも事実。

「もしも相手が目を切って出血していなかったら、もしも相手がエルナンデスよりもタフだったら、もしも相手がエルナンデスよりもパンチ力があったら――と考えると、手放しで喜んでばかりもいられない。井上が世界の舞台でスターになりたいのであれば、なおさらのこと」と語った。同感である。

今後は世界中の猛者やそのブレーンたちから井上は研究されることになる。正面から井上と渡り合うことを避け、反則ぎりぎりのラフ行為でリズムを崩そうとする選手も出てくるはずだ。この先、思わぬダメージを被(こうむ)ったり、出血に悩まされたりという苦しい試合も出てくることだろう。また、年齢を重ねるごとに減量も過酷になっていくことが予想される。

そんな未経験の試練を、井上尚弥はどう乗り越えていくのか――。ただ、20歳の新チャンピオンは、それすらも楽しみにさせてしまうほどの逸材なのである。[sportiva]
http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/keiba_fight/2014/04/07/post_213/

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[7] 怪獣ひなまつり

エルナンデスは強いよ。普通に強い王者って印象。 井上は正直どうでも良かったね。日本の温室育ちの半端なボクサーだろってイメージだった。日本人は国内試合ばっかだしな。あぁこいつもかって。
試合見て反省しました。井上、怪物だわ。めちゃ強い。頑張って欲しい。 パッキャオ二世になって欲しい!

[6] 亀田も弱くはないけどね・・色々問題が

キャリアは浅くても攻撃面ではチャンピオンを圧倒してたように見えたよ。ディフェンスを更に磨けば井岡みたいな安定感が出るんじゃないかな。

[5] そり

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