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精神を病む!?人気だったギャグ漫画家が路線変更、断筆するワケ

ある時期には高い支持を集めながら、いつの間にか第一線から退いてしまった漫画家は山ほどいる。漫画家も歌手や役者のように人気商売だ。メジャーで受けなければ活躍の場を少年誌出身なら青年誌からエロ、4コマ誌(少女漫画ならレディコミ)など別ジャンルに求め、それでも仕事が来なくなれば廃業するしかない。

トイレット博士「いつの間にか」感が強いのは『トイレット博士』のとりいかずよしである。とりいはその大ヒット作の後も、地味に(1980年代半ばくらいまで)ギャグ漫画を放ってはいた。

しかし、そのテンションは較べるべくもなく、「ビッグコミックスペリオール」に1988年から連載された『トップはオレだ!! 日本一のセールス男』以降は、ストーリー漫画に転向を図ったらしい。

したがって決してギャグ漫画界から「消えた」わけではないのだが、師である赤塚不二夫直系のあの絵柄の愛らしさも、そうした作品からは感じられなかった。ちなみに現在は愛知淑徳大学・大学院のメディアプロデュース学部/文化創造研究科で、教鞭を執っている。

また、巨匠と言われる漫画家も、一時期ギャグ漫画に挑戦していたりもする。山上たつひこと楳図かずおだ。

がきデカ山上はチャンピオン連載の『がきデカ』(1974~80年)があまりに有名だが、あまりにもヒットしすぎてしまったことに山上は苦悩した。「大衆向けの作品にするほど、ギャグの毒が読み手に伝わりにくくなる。

毒が僕の中に逆流して、自家中毒を起こしてしまった」とは、2009年4月、読売新聞の特集〈マンガ50年〉の取材での言葉だ。山上は1990年に断筆、小説家に転向した(2004年に続編の『中春こまわり君』をビッグコミック誌にて、不定期ながら連載開始したが現在は休止中)。

まことちゃんホラーマンガの第一人者・楳図は1995年から休筆中の現在もタレント活動に忙しく、ギャグ漫画としては、1988年から1年間『まことちゃん』のリメイク版を描いただけ。これは1976年から5年に渡って「週刊少年サンデー」に連載した『まことちゃん』以来のことだった。

あとは1971年に同じく連載された『まことちゃん』先行作品の『アゲイン』があるのみ。ギャグ漫画ではないが、2012年に名作『14歳』の完結編を描き下ろし、休筆から実に17年振りの結末にファンは歓喜した。

恐怖と笑いは紙一重。楳図の本質はむしろギャグにあったのかもしれない。再び筆を執るならぜひギャグ漫画を、との声も多いのだが。

[ブッチニュース]
http://bucchinews.com/geinou/4140.html

■ギャグ漫画家が急にシリアスになる理由とは

昨年のベネチア国際映画祭で、主演の2人がそろって新人俳優賞を獲得した映画「ヒミズ」が、1月14日に公開された。かなりの話題作なのですでにご存知の方も多いと思うが、この映画は、古谷実氏の同タイトルの漫画が原作になっている。

映画「ヒミズ」
映画「ヒミズ」

行け!稲中卓球部古谷氏原作の「ヒミズ」は、「行け!稲中卓球部」など3つの伝説的なギャグ漫画(筆者独断)の後の作品であり、過去の作品とはうって変わって、ギャグ一切無しで深く重いテーマが取り扱われている。ヤングマガジンの連載は 「笑いの時代は終わりました。これより、不道徳の時間をはじめます」という言葉で始まっており、過去作品とは180度異なる展開に度肝を抜かれたのは筆者だけではないはずである。

おぼっちゃまくんまた、古谷氏以外にも、戦争や国際関係など複雑な問題に鋭いメスを入れる漫画作品「ゴーマニズム宣言」で有名な小林よしのり氏がブレイクしたのは月刊コロコロコミック「おぼっちゃまくん」であるなど、もともとギャグ漫画を作品の主体にしていた作者が、突然シリアスな漫画を書くケースは割とよくあるように思われる。

このような、「ギャグ漫画家が急にシリアスになるわけ」を調べるべく、まずは「マンガ学部」や「マンガ学科」を持つ大学に問い合わせを試みたが、「年末年始で忙しいので......」とやんわりと断られ、途方にくれていたところ、ある漫画家さんから以下のような返事をいただいた。以下、その内容を一部編集した上で掲載させていただく。

「ギャグ漫画家が急にシリアスになるわけ、とのことですが、取り立てて理由付けを必要とするほどの問題ではないように思います。

役者さんでも、お笑い芸人さんが演技派俳優として活躍される例はいくらでもありますし、逆にシリアスな役所の多い俳優さんが笑いをとる演技をされることもあります。つまり、役者でも漫画家でも、『表現者』としては観客を泣かせたり、笑わせたりを自在にできるのが当たり前のことです。

敢えていうなら、『もともとシリアスな演技者志願だったけれどたまたま3枚目のキャラクターでデビューした』という場合には、チャンスがあればシリアスな演技派にチャレンジしたいと考えることもあると思います。

一般論として、漫画家の方も同じ理由で路線変更される場合はあるかもしれません。

いずれにせよ、描き手としては、シリアス漫画でもギャグ漫画でも同じ漫画だと思って描いています」

うーん、なるほど。もちろんこれは一人の漫画家さんの意見であり、全ての漫画家さんの意見を代表するものでは決してないが、これが表現者の思いなのか、とも感じる。そういえば、古谷氏の過去の作品のふしぶしにも、「人生とは何か」という問いがちりばめられており、作者が抱えているテーマは不変なのかもしれない。

もしかしたら、「ギャグ漫画」や「ギャグ漫画家」といったカテゴライズすら、当の漫画家さんには不服なのかもしれないですね。[excite]
http://www.excite.co.jp/News/bit/E1327381701632.html

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